り過ぎようとした。しかしコーンの方で呼びかけた。
「あの日からどうしてたんだ?」と彼は笑いながら尋ねた。「君のところへ行こうと思ったが、宿所を忘れたものだからね……。君、僕は見違えていたよ。君は実にえらい男だ。」
クリストフはびっくりしまた多少|極《き》まり悪くもなって、相手の顔をながめた。
「僕に怒《おこ》ってはいないのかい。」
「君に怒るって? 何を言《い》ってるんだ!」
彼は怒るどころか、クリストフがヘヒトをやりこめた仕方を、たいへん愉快がっていた。おかげで面白い目に会ったのだった。ヘヒトとクリストフとどちらが道理だか、そんなことは問題でなかった。彼は自分に与えてくれる面白みの程度によって、人の顔を見てるのだった。そして、きわめて面白い興味の種を、クリストフのうちに見て取って、それを利用したがっていた。
「会いに来てくれるとよかったんだ。」と彼はつづけて言った。「僕は待っていたんだ。ところで今晩は、どうしてるんだい? 飯を食いに行こう。もう放さないよ。ちょうど仲間が集まることになってる。何人かの芸術家だけで、半月に一度の会合なんだ。こういう連中も知っておく必要がある。来たまえ
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