らの手に渡されてる者が、いくらもあるということを。そういう人々はいかに苦しんでいることだろう! お前も考えてみるがいい。いかにわれわれは苦しんだか! そしてまた、ますます重苦しい空気が、腐敗した芸術が、不道徳な卑しい政治が、満足の笑《え》みを浮かべて虚無の息吹《いぶ》きに身を任せる柔懦《じゅうだ》な思想が、日に日に積もってゆくのを見て、われわれとともにいかに多くの者が苦しんだか……。われわれはたがいに寄り添い、呼吸もできないほど苦しみながら、そういう中にじっとしていたのだ……。ああ、幾何《いくばく》の辛い年月をいっしょに過ごしてきたことだろう! わが権力者らは、彼らの下にわれわれの青春がもだえた苦悩を、夢にも知らないのだ……。われわれは抵抗した。われわれはみずから身を救った……。そして、今、われわれは他人を救わないでいいだろうか。こんどは他人が同じ苦しみのうちに陥ってるのを、手を差し出してもやらずに放《ほう》っておいていいだろうか。否、彼らの運命とわれわれの運命とは結び合わされている。われわれの仲間はフランスにたくさんいる。彼らは俺が声高く説くところのことを考えてくれる。俺は彼らのため
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