に説くつもりなのだ。やがて俺は彼らのことを口にするだろう。俺は早く示してやりたい、真のフランスを、圧制されたるフランスを、深きフランスを――ユダヤ人、キリスト教徒、あらゆる信仰と血統とを超越した自由な魂を。――しかしながら、そこに達するためには、家の扉《とびら》を番してる奴らの間に一条の血路を、まず開かなければならない。無気力の状態から奮いたってついに牢獄《ろうごく》の壁を覆《くつがえ》すことを、この美しい捕虜《ほりょ》にできさしてやりたい! 彼はおのれの力をも敵の凡庸《ぼんよう》さをも知らないのだ。
予 お前の言うところはもっともだ。しかしお前が何をしようとも、憎むことだけは控えるがいい。
クリストフ 俺はなんらの憎悪《ぞうお》をもいだいてはしない。最も悪い奴らのことを考える時でさえ、奴らもやはり人間であって、われわれと同じく苦しんでおり、いつかは死んでゆくのだということを、俺はよく知っている。しかし奴らと闘《たたか》わなければならないのだ。
予 闘うことは、それがたとい善をなさんがためのものにせよ、悪をなすことなのだ。生きた一人の人間にでも苦痛を与えることがあるならば、その苦痛は、
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