。」とクリストフは叫び出した。――(彼はもうフランス語の言い回しを多少知っていた。)――「そんな種類の人間だと僕を思ったら間違いです。まともに顔を見なかったり口先だけで物を言ったりするやり方で、僕をへこませるとでも思ってるんですか。はいって来た時だって、僕の挨拶《あいさつ》に答えもしないで……。僕に向かってそんな態度をして、あなたはいったいなんです? 音楽家とでも言うんですか。何か書いたことでもありますか。……そして、作曲を生命としてる僕に向かって、作曲の仕方を教えようとでもいうんですか。……そして、僕の音楽を読んだあとに、小娘どもを踊らせるために、大音楽家の作品を去勢してくだらないものになすこと以外には、何も頼むような仕事はないというんですか。……パリーの者はあなたから甘んじて教えを受けるほど卑劣なら、そういうパリー人を相手になさるがいい。僕は、そんなことをするよりくたばってしまう方がまだましです。」
 激烈な調子を押えることができなかったのである。
 ヘヒトは冷然として言った。
「それはあなたの勝手です。」
 クリストフは扉《とびら》をがたりといわして出て行った。ヘヒトは肩をそびや
前へ 次へ
全387ページ中53ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング