儀式張った形式とで飾られていた。彼は書簡を「フランスのアカデミー院」へ贈った。――ただ一人の者がそれを読んで、友人らと大笑いをした。
一週間後に、クリストフはまた書店へ出かけた。このたびは偶然に助けられた。入口で彼は、出かけようとするシルヴァン・コーンにぶっつかった。コーンはつかまったのを見て顔を渋めた。しかしクリストフはうれしさのあまり、その渋面に気づかなかった。彼は例のうるさい調子で、コーンの両手を取り、※[#「口+喜」、第3水準1−15−18]々《きき》として尋ねた。
「旅に行ってたそうだね。面白かったかい。」
コーンはうなずいたが、しかしその顔は和らいでいなかった。クリストフは言いつづけた。
「僕が来たのは……わかってるだろう……。話はどうだった?……え、どういうふうだい。僕のことを言ってくれたろうね。返事はどうだった。」
コーンはますます顔を渋めた。クリストフは様子ありげなその態度に驚いた。まるで別人のようだった。
「君のことは話してみたよ。」とコーンは言った。「だがまだ結果はわからない。隙《ひま》がなかったんだ。君に会った時から実に忙しかった。用事がたくさん頭につかえ
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