《ほう》り出した。
その日の残りの時間はなかなか過ぎなかった。しかしクリストフは、寝苦しい昨晩と午前中の奔走とにひどく疲れていたので、椅子《いす》にかけたままついにうとうととした。夕方ようやくわれに返って、すぐに寝床についた。そして十二時間ぶっとおしにぐっすり眠った。
翌日八時ごろから、彼は約束の返事を待ち始めた。彼はコーンの几帳面《きちょうめん》さを少しも疑わなかった。コーンが店へ出る前にこの宿へ寄るかもしれないと思って、一歩も外に踏み出さなかった。午《ひる》ごろになると、室をあけないために、下の飲食店から朝食を取り寄せた。それから、コーンが食事後にやって来るだろうと思って、ふたたび待ってみた。室の中を歩き、腰をおろし、また歩き出し、階段を上ってくる足音が聞こえると、扉《とびら》を開いてみたりした。待ち遠しさをまぎらすためにパリーのうちを散歩してみる気も、さらに起こらなかった。彼は寝台の上に横たわった。思いはたえず老母の方へ向いていった。彼女もまたこの時彼のことを思っていたのだ――彼のことを思ってくれるのは彼女だけだったのだ。彼は彼女にたいして、限りない愛情と見捨てた悔恨とを感
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