薦してくれないかね。」
「いいとも!」とコーンは言った。「望みどおりの人に推薦しよう。こちらで僕はだれでも知っている。なんでもお役にたとう。」
 彼は自分のもっている信用を示すのがうれしかった。
 クリストフは感謝にくれた。心から大きな重荷が取れた心地がした。
 食卓につくと彼は、二日も前から物を食べなかったかのようにむさぼり食った。首のまわりにナフキンを結えつけて、ナイフですぐ食べた。コーンのハミルトンは、そのひどい食い方や田舎《いなか》者めいた様子に、ごく不快を感じた。また自慢にしてる事柄をあまり注意してもくれないことに、同じく不満を覚えた。彼は自分の艶福《えんぷく》や幸運の話をして、相手を煙に巻いてやろうとした。しかしそれは無駄《むだ》な骨折りだった。クリストフは耳を傾けないで、無遠慮に話をさえぎった。彼は舌がほどけてきて馴《な》れ馴れしくなっていた。謝恩の念で心がいっぱいになっていた。そして未来の抱負を率直にうち明けながら、コーンを困らした。ことに、テーブルの上から無理にコーンの手を取って、心こめて握りしめたので、コーンをさらにやきもきさした。しまいには、感傷的なことを言い出し
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