胸に紫色の飾りをつけ、種々の模様をちらし、真白に塗りたてた快活な顔の上に、艶《つや》のいい金髪を束ねていた。フランシュ・コンテの訛《なま》りがある男らしい声で、気障《きざ》なことを言いたてていた。
コーンはまたクリストフに種々尋ねだした。国の人たちのことを残らず尋ね、だれだれはどうなったかと聞き、すべての人を記憶してることを追従《ついしょう》的に示していた。クリストフはもう反感を忘れてしまっていた。感謝を交えた懇切な態度で答え、コーンにとってはまったく無関係な些細《ささい》な事柄をやたらに述べた。コーンはそれをふたたびさえぎった。
「ちょっと失敬。」と彼はまた言った。
そして他の婦人客へ挨拶《あいさつ》に行った。
「ああそれじゃあ、」とクリストフは尋ねた、「フランスには婦人の作家ばかりなのか。」
コーンは笑い出した。そしてしたり顔に言った。
「フランスは女だよ、君。君がもし成功したけりゃ、女を利用するんだね。」
クリストフはその説明に耳を貸さないで、自分だけの話をつづけた。コーンはそれをやめさせるために尋ねた。
「だが、いったいどうして君はこちらへ来たんだい。」
「なるほど、」
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