ーでは、滑稽によってすべてが得られる、光栄をも幸運をも得られる。シルヴァン・コーンは、そのフランクフルト式な虚飾のために毎日かれこれ言われても、もはやそんなことは平気だった。
 彼は重々しい調子と頭のてっぺんから出る声とで口をきいていた。
「やあ、これは驚いた!」と彼は快活に叫びながら、あまり狭い皮膚の中につめこまれてるかと思われる指の短いぎこちない手で、クリストフの手を取って打ち振った。なかなかクリストフを放しそうになかった。最も親しい友人にめぐり会ったような調子だった。クリストフはあっけにとられて、コーンから揶揄《からか》われてるのではないかと疑った。しかしコーンは揶揄ってるのではなかった。なおよく言えば、もし揶揄ってるのだとしてもそれはいつもの伝にすぎなかった。コーンは少しも恨みを含んではいなかった。恨みを含むにはあまりに利口だった。クリストフからいじめられたことなんかは、もう久しい以前に忘れてしまっていた。もし思い出したとしてもほとんど気にしなかったろう。新しい重大な職業を帯びパリー風の華美な様子をしているところを、旧友に見せてやる機会を得て大喜びだった。驚いたと言うのも嘘では
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