一世紀が、それから立ちのぼっていた。クリストフは今この書物といっしょにいると、いくらか孤独の感が薄らいだ。
彼は最も痛ましいところを開いた。
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それ人の世に在るは、絶えざる戦闘《たたかい》に在るがごとくならずや。またその日々は、傭人《やといびと》の日々のごとくならずや。……
我|臥《ふ》せばすなわち言う、何時《いつ》我起きいでんかと。起きぬれば夕を待ちかねつ。夜まで苦しき思いに満てり。……
わが牀《とこ》は我を慰め、休息《やすらい》はわが愁《うれ》いを和らげんと、我思いおる時に、汝は夢をもて我を驚かし、異象《まぼろし》をもて我を懼《おそ》れしめたまう。……
何時《いつ》まで汝我を容《ゆる》したまわざるや。息をする間だに与えたまわざるや。我罪を犯したるか。我汝に何をなしたるか、おお人を護《まも》らせたまう者よ。……
すべては同じきに帰す。神は善と悪とを共に苦しめたまう。……
よしや我彼が御手に殺さるるとも、我はなお、彼に希《のぞ》みをかけざるを得ざるなり。……
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かかる無限の悲しみが不幸な者にたいしてなす恵みを、卑俗な心の
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