さに、クリストフはまた元気を得た。彼の気分は直った。彼は何にも見ないようにして足を返した。もう食べることも考えてはいなかった。だれにも話しかけることができないほどだった。ちょっとしたことにもまた涙が流れそうだった。彼は疲れはてていた。道を間違えて、やたらに歩き回り、ほんとに迷ってしまったと思ってるとたんに、宿屋の前へ出た。――彼は宿屋の町名まで忘れてしまっていた。
彼は自分の汚ない住居へもどった。一日食事をしなかったので、眼は燃えるようになり、心も身体も弱りきっていて、室の隅《すみ》の椅子《いす》にがっくりと腰をおろした。二時間もそのままで身動きができなかった。ついに自失の状態からむりに身をもぎ離して、床についた。熱っぽい無感覚のうちに落ちて、幾時間も眠ったような気がしながらたえず眼を覚ました。室は息苦しかった。彼は足先から頭まで焼けるようだった。恐ろしく喉《のど》が渇《かわ》いていた。馬鹿《ばか》げた悪夢にとらえられて、眼を開いてる時でもそれにつきまとわれた。鋭い悩みがナイフで刺されるように身にしみた。真夜中に眼を覚まし、残忍な絶望の念に襲われて、喚《わめ》きたてようとした。その声
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