彼らがより多く個性をそなえてるというのではなかった。否おそらく個性はより少なかったであろう。しかしながら彼らは、どこへ行ってもまたいつでもそうであるが、この小都市においても――異民族であるがために、数世紀来孤立してきて嘲笑的な観察眼が鋭利にされているので――最も進んだ精神の所有者であり、腐蝕《ふしょく》した制度や老朽した思想の滑稽《こっけい》な点に最も敏感な精神の所有者であった。ただ、彼らの性格は彼らの知力ほど、自由でなかったので、彼らはそれらの制度や思想を冷笑しながらも、それらを改革することよりむしろ、それらを利用することが多かった。彼らはその独立|不羈《ふき》の信条にもかかわらず、紳士アダルベルトとともに、田舎《いなか》の小ハイカラであり、富裕無為な息子《むすこ》さんたちであって、娯楽や気晴らしのつもりで文学をやってるのであった。彼らはみずから尊大なふうをして喜んでいたが、人のよい威張りやにすぎなくて、若干の無害な人々、もしくは自分たちを決して害し得ないと思われる人々、などにたいしてしか尊大ぶりはしなかった。他日自分たちがはいってゆき、昔攻撃したあらゆる偏見と妥協しながら、世間普通
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