、雑誌や客間にあまり多くいすぎる。しかも彼は唯一人であることを欲していた。階級通有の偏見を超越してる大人物らしく振舞おうと、心がけていた。そのくせだれよりもいっそう偏見をもっていた。彼はそれをみずから認めてはいなかった。自分の主宰してる雑誌で、周囲にユダヤ人ばかりを寄せ集めて、反ユダヤ党である身内の者らに不平を言わせ、みずからおのれの精神の自由を証明することを、いつも快しとしていた。同人らにたいしては、慇懃《いんぎん》な対等の調子を装っていた。しかし心の底では、平静な限りない軽蔑《けいべつ》を彼らにたいしていだいていた。彼らが彼の名前と金とを利用して喜んでいるのを知らないではなかった。そして彼らのなすままに任して、彼らを軽蔑する楽しみを味わっていた。
 そして彼らの方でもまた、彼が自分たちのなすままに任していることを軽蔑していた。なぜなら彼らは、彼がそのために利を得てることをよく知っていたから。与える者に与えよである。ワルトハウスは彼らに、自分の名前と財産とを貸与していた。彼らは彼に、自分らの才能と実務的精神と読者とを貸与していた。彼らは彼よりもいっそう怜悧《れいり》だった。と言って、
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