。そして父の貪欲《どんよく》を大声に罵倒してはいたけれど、心の中では、それをみずから笑いながら父の方が道理だと認めていた。で要するに、ほんとうに気を入れて自分の金で雑誌を維持していたのは、金が自由になるワルトハウスほとんど一人だけであった。後は詩人だった。アルノー・ホルツやウォルト・ホイットマンなどにならって、「多様韻律体《ポリメートル》」の詩を書いていた。ごく長い句と短い句とが交互になってる詩で、一点符、二点符、三点符、横線符、休止符、大文字、イタリック文字、傍線付の言葉などが、頭韻《とういん》法や反覆法――一語の、一行の、または全句の――などとともに、きわめて重要な役目をさせられていた。またあらゆる国の言語や音が插入《そうにゅう》されていた。彼はセザンヌの手法を詩に用いるのだと言っていた。(その理由はだれにもわからなかった。)そして実を言えば、空粗な事物をことによく感ずるだけの、かなり詩的な魂をそなえていた。感傷的で冷静であり、また幼稚で気取りやであった。その苦心した詩は、豪放な無頓着《むとんじゃく》さを装っていた。彼は上流の人としては、りっぱな詩人であったろう。しかしこの種の人は
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