ユダヤ人であって、そして皆すこぶる富裕だった。マンハイムは銀行家の息子《むすこ》、ゴールデンリンクは有名なぶどう園主の息子、マイは冶金《やきん》工場長の息子、エーレンフェルトは大宝石商の息子だった。彼らの父親らは、勤勉|強靭《きょうじん》な古いイスラエル系統に属していて、その民族的精神に執着し、強烈な精力をもって財産を作り、しかもその財産よりその精力の方をより多く享楽していた。ところが息子らは、父親らが建設したものを破壊するために生まれたかの観があった。家伝の偏見と、勤倹貯蓄な蟻《あり》のような性癖とを、嘲笑《ちょうしょう》していた。芸術家を気取っていた。財産を軽蔑《けいべつ》して、それを投げ捨てるようなふうをしていた。しかし実際においては、その手から金が漏れ落ちることはほとんどなかった。彼らはいかに馬鹿な真似《まね》をしようとも、精神の明晰《めいせき》と実際的の能力とをまったく失うほどには決していたらなかった。そのうえ、父親らはそれを監督して、手綱を引きしめていた。中で最も放縦なマンハイムは、もってる物をことごとく本気で濫費したろうけれど、しかし彼はかつて何かをもってることがなかった
前へ 次へ
全527ページ中90ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング