書けるよ。それに、批評家になればあらゆる権利をもつんだ。公衆にたいしては遠慮はいらない。公衆はこの上もなく馬鹿なものだ。芸術家というのもつまらないものだ。人から非難の口笛を吹かれても仕方はない。しかし批評家というものは、『彼奴《あいつ》を罵倒《ばとう》しろ!』と言うだけの権利をもっている。観客は皆思索の困難を批評家に委《ゆだ》ねてるんだ。君の勝手なことを考えればいい。少なくとも何か考えてる様子をすればいい。それらの鵞鳥《がちょう》どもに餌《え》を与えてやりさえすれば、それがどんな餌だろうと構わない。奴《やつ》らはなんでも飲み込んでしまうんだ。」
 クリストフは心から感謝しながら、ついに承諾してしまった。そしてただ、何を言っても構わないということを条件とした。
「もちろんさ、もちろんさ。」とマンハイムは言った。「絶対の自由だ! われわれは各人皆自由なんだ。」

 マンハイムは、その晩芝居がはねた後、三度劇場へやって来て彼を連れ出し、アダルベルト・フォン・ワルトハウスや他の友人らに、彼を紹介した。彼らは彼を懇《ねんご》ろに迎えた。
 土地の古い貴族の家柄であるワルトハウスを除けば、彼らは皆
前へ 次へ
全527ページ中89ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング