の生活を静かに営むようになるだろうとわかってるような社会とは、葛藤《かっとう》を結ぶ気はさらになかった。そして、いよいよ戈《ほこ》を揮《ふる》いもしくは弁を揮わんとし、現在の偶像――それもすでに揺ぎ始めてる――にたいして、騒々しく出征の途にのぼらんとする時には、いつも自分の船を焼かないだけの用心をしていた。危険な場合にはまた船に乗り込むのだった。それにまた、戦いの結果がどうであろうとも――戦いが済みさえすれば、また戦いが始まるまでには十分長い時間があった。敵のフィリスチン人は静かに眠ることができた。新しいダヴィデ派が求めていたところのものは、なろうと思えば恐るべき者にもなり得るのだということを、敵に信ぜさせることであった。――しかし彼らはなろうと思っていなかった。芸術家らと懇意にし、女優らと夜食をともにする方を、彼らはより多く好んでいた。
クリストフは、その仲間にはいると勝手が悪かった。彼らの話は、女や馬に関することが多かった。しかも厚かましい話し方をしていた。彼らはひどく形式張っていた。アダルベルトは、白々《しらじら》しいゆるやかな声音で、みずから退屈し人を退屈させる上品なていねい
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