」
「ところが、まだ若いんなら、われわれは自分でそれを見出すだろう。……しかし僕はそんなことを信じない。一度よかったものは、もう決して二度とよくはない。変化だけがいいんだ。何よりも肝要なのは、老人を厄介払いすることだ。ドイツには老人が多すぎる。老いたる者は死すべしだ!」
クリストフはそれらの妄論《もうろん》に、深い注意をもって耳を傾け、それを論議するのにいたく骨折った。彼はその一部には同感を覚え、自分と同じ思想を多少認めた。と同時にまた、愚弄《ぐろう》的な調子で極端にわたるのを聞くと、ある困惑を感じた。しかし彼は他人もすべて自分と同じように真摯《しんし》であると見なしていたので、今自分よりいっそう教養あるように見えいっそうたやすく論じているその相手は、おそらく主義から来る理論的な結論を述べてるのであろうと考えた。傲慢《ごうまん》なクリストフは、多くの人からは自惚《うぬぼれ》すぎてるとけなされていたけれども、実は素朴《そぼく》な謙譲さをもっていて、自分よりすぐれた教育を受けた人々に対すると、しばしば欺かれることがあった――彼らがその教育を鼻にかけないで困難な議論をも避けない時には、こと
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