なお変化し、常に変化したいと思っていた。……生の停滞を望む馬鹿者ども!……彼の幼年時代の作品中に見出せる興味は、その幼稚な未熟さにあるのではなくて、未来のために蓄《たくわ》えられてる力にあるのだった。そしてこの未来を彼らは滅ぼそうと欲してるのだった!……否、彼らは彼がいかなる者であるかをかつて理解しなかった。かつて彼を愛したことはなかった。彼らが愛したのは、彼のうちの卑俗な点、凡庸《ぼんよう》な輩と共通な点ばかりであって、真に彼自身[#「彼自身」に傍点]であるところのものをではなかった。彼らの友誼《ゆうぎ》は一つの誤解にすぎなかった……。
彼はおそらくこの誤解を誇張して考えていた。そういう誤解の例は、新しい作品を愛することはできないが、それが二十年もの歳月を経ると心から愛するような、朴直《ぼくちょく》な人々にしばしばある。彼らの虚弱な頭にとっては、新しい生命はあまりに香気が強すぎる。その香気が時《タイム》の風に吹き消されなければいけない。芸術品は年月の垢《あか》に埋もれてから初めて、彼らにわかるようになる。
しかしクリストフは、自分が現在[#「現在」に傍点]である時には人に理解され
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