》を称揚し、彼女が歌った歌曲《リード》は、ただ報道として列挙したにすぎなかった。クリストフの他の作品については、どの新聞も大差なく、わずかに数行の批評のみだった。「……対位法の知識。錯雑せる手法。霊感《インスピレーション》の欠乏。旋律《メロディー》の皆無。心の作にあらずして頭の作。誠実の不足。独創的たらんとする意図……。」その次に、すでに地下に埋もれてる楽匠、モーツァル、ベートーヴェン、レーヴェ、シューベルト、ブラームスなど、「みずから希《こいねが》わずして独創的なる人々、」そういう人々の独創について、真の独創について、一項が添えてあった。――それから次に、自然の順序として、コンラーディン・クロイツェルのグラナダ[#「グラナダ」に傍点]の露営[#「露営」に傍点]が大公国劇場で新しく再演されることに、説き及ぼしてあった。「書きおろされたばかりのものかと思われるほど清新華麗なその美妙な音楽」のことが、長々と報道されていた。
これを要するに、クリストフの作品は、好意を有する批評家たちからは、全然理解されず――少しも彼を好まない批評家たちからは、陰険な敵意を受け――終わりに、味方の批評家にも
前へ
次へ
全527ページ中74ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング