まやかし坊主《ぼうず》の祈祷《きとう》」と呼び、シューマンのある種の歌曲《リード》を、「小娘の音楽」と見なした――しかもそれは、貴顕の方々がそれらの作品を好んでいると仰《おお》せられた時にである! 大公爵はその無礼な言葉を片付けるために、冷やかに言われた。
「お前の言うことを聞いていると、それでもドイツ人かと疑われることがあるよ。」
そういう高い所から落ちてきたこの復讐《ふくしゅう》的な言葉は、ごく低い所までころがり落ちずにはいなかった。クリストフが成功を博してるという理由から、あるいはいっそう個人的な理由から、彼にたいして遺恨の種があるように思ってる人々は皆、実際彼は純粋なドイツ人ではないということをもち出さずにはいなかった。父方の家は――人の記憶するとおり――フランドルの出であった。それからというものは、この移住者が国家的光栄を誹謗《ひぼう》するのは別に驚くにも当たらないこととなった。右の事実はすべてを説明するものであった。そしてゲルマン式自尊心は、ますますおのれを尊《とうと》むとともに敵を軽蔑するの理由を、そこに見出したのであった。
全然精神的なその復讐にたいして、クリストフ
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