日は日を消してゆき、今の彼は以前の彼とは非常に隔たっていた。しかし他人は彼のためにそれを覚えていた。隣人に関するあらゆる過失、あらゆる欠点、嫌《いや》な醜い不面目なあらゆるできごとを、一つも消え失《う》せないようにと細かく書きたてて、それを社会的職務としている連中が、すべての小都市に存在している。クリストフの新しい矯激な行ないは、昔の行ないと相並んで、彼の名義で帳簿に書きのせられた。両者はたがいに照合し合った。道徳を傷つけられた恨みに、善良な趣味を涜《けが》された恨みが加わった。最も寛大な人々は彼のことをこう言った。
「わざと変わった真似《まね》をしたがってるんだ。」
しかし大多数の者は断言した。
「まったく狂人だ。」
なおいっそう危険な風評が――高貴のところから出ただけに効果の多い風評が――広がり始めた。それは次のようなことだった。……クリストフはやはりつづけて公務のために宮廷へ伺候していたが、そこでも例の悪趣味を出して、親しく大公爵に向かって、世に尊敬されてる楽匠らについて顰蹙《ひんしゅく》すべき無作法な言辞を弄《ろう》した。メンデルスゾーンのエリア[#「エリア」に傍点]を、「
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