はかえって独創的たる最上の方法であることを、またジャン・クリストフは過去にも未来にもただ一度しか存在しないということを、彼は傲慢《ごうまん》にも信じていた。青春の素敵な無遠慮さで、まだ何物もできあがったものはないように思っていた。すべてが作り上げるべき――もしくは作り直すべき――もののように思えた。内部充実の感情は、前途に無限の生命を有するという感情は、過多なやや不謹慎な幸福の状態に彼を陥れていた。たえざる喜悦。それは喜びを求める要もなく、また悲しみにも順応することができた。その源は、あらゆる幸福と美徳との母たる力の中にあった。生きること、あまりに生きること!……この力の陶酔を、この生きることの喜悦を、自分のうちに――たとい不幸のどん底にあろうとも――まったく感じない者は、芸術家ではない。それが試金石である。真の偉大さが認められるのは、苦にも楽にも喜悦することのできる力においてである。メンデルスゾーンやブラームスの輩は、小雨や十月の霧などの神たる輩は、かかる崇高な力をかつて知らなかったのである。
 クリストフはその力を所有していた。そして無遠慮な率直さで自分の喜びを見せつけていた。少し
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