の手紙――かわいいおどけた数語――が来た。そして、それきりだった。彼女は彼を忘れてはいなかった。しかし彼のことを考える隙《ひま》がなかった。

 コリーヌの魅力にまだとらえられており、彼女と話し合った考えで頭がいっぱいになっていて、クリストフは、彼女が若干の歌曲を歌いながら演ずるはずの戯曲のために――一種の詩的|插楽劇《メロドラマ》のために、音楽を書こうと空想した。この種の芸術は、かつてドイツでもてはやされ、モーツァルトから熱心に鑑賞され、ベートーヴェンやウェーバーやメンデルスゾーンやシューマンやまたあらゆる古典的楽匠らによって、実際試みられたものであるが、劇と音楽の決定的様式を実現したと自称するワグナー派の勝利以来、すっかり廃《すた》れたのであった。厚顔な衒学《げんがく》的なワグナー派は、新しい插楽劇《メロドラマ》をすべて排斥するだけで満足せず、古い插楽劇《メロドラマ》を飾りたてようとつとめた。彼らは話される対話の痕跡《こんせき》を歌劇《オペラ》から注意深く消し去って、モーツァルトやベートーヴェンやウェーバーらの作品のために、自己流の叙唱《レシタチーヴ》を書いた。それらの傑作の上にお
前へ 次へ
全527ページ中230ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング