彼は尋ねた。「そう言っちゃいけないんですか。」
「いいわ、いいわ。」と彼女は笑いこけながら言った。「ちょうどそのとおりよ。」
 ついに二人は出かけた。彼女のきらびやかな服装とおかまいなしの言葉とは、人の注意をひいた。彼女はすべての物を嘲笑《ちょうしょう》的なフランス婦人の眼でながめ、そしてその印象を隠そうとしなかった。流行品店や絵葉書店などの前で、彼女はよく放笑《ふきだ》した。感傷的な絵、滑稽《こっけい》な露骨な絵、売笑婦の姿、皇族、赤服の皇帝、青服の皇帝、ゲルマン[#「ゲルマン」に傍点]号の舵《かじ》を取って天を軽蔑《けいべつ》してる老水夫服の皇帝、そんなものが雑然と並べてあった。ワグナーの頑固《がんこ》頭を飾りにした一組の食器の前や、蝋《ろう》細工の頭が傲然《ごうぜん》と控えてる理髪店の前で、彼女は大笑いをした。プロシアやドイツ連邦やまっ裸の軍神を引き連れて、旅行|外套《がいとう》を着け尖《とが》った兜《かぶと》を頂《いただ》いた老皇帝を現わしてる、愛国的記念塔の前でも、彼女は不敬にもおかしがった。人々の顔つきや歩き方や話し方について、おかしなものはなんでも通りがかりに取り上げた。
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