うかがった。彼女らは頬《ほお》がくぼみ、唇《くちびる》と頬骨とがつき出て、ダ・ヴィンチ式のしかも多少卑しい微笑を浮かべ、その粗雑な話し方と激しい笑いとは、穏やかなおりの顔の調和を不幸にも常に破っていた。しかし、その下層民の滓《かす》の中にも、大きな頭をし、ガラスのような眼をし、多くは動物的な顔をし、肥満してずんぐりしてるそれらの者どもの中にも、最も高尚な民族から堕落してきたそれらの末裔《まつえい》の中にも、その臭い汚泥《おでい》の中にさえ、沼沢の上に踊る鬼火のように輝く不思議な燐光《りんこう》が、霊妙な眼つき、燦然《さんぜん》たる知力、水底の泥土《でいど》から発散する微細な電気が、見て取られるのであった。そしてそれはクリストフを幻惑し不安ならしめた。身をもがいてるりっぱな魂が、汚辱から脱しようと努めてる偉大な心が、そこにあるのだと彼は考えた。そして彼は、それらに出会って、それらを助けてやりたかった。よく知りもしないで、また多少恐れながらも、彼はそれらを愛していた。しかしかつて、そのいずれとも親交を結んだことがなかった。ことにユダヤ人仲間の選まれたる人々と接するの機会は、かつて到来したこ
前へ
次へ
全527ページ中102ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング