口実を作り出す機会をのがさなかった。二人の老人は非常に健啖《けんたん》だった。クンツは食卓につくと別人の感があった。太陽のように輝き出すのだった。料理屋の看板にもなり得るほどだった。シュルツもまたそれに劣らず御馳走《ごちそう》には敏感だった。しかし不健康のためにいくらか控え目にしなければならなかった。実を言えば、しばしばそれを忘れることがあった。そしてはひどい報いを受けた。そういう時彼は愚痴をこぼさなかった。病気であるとしても、少なくともその原因を知っていたのである。ところで彼には、クンツと同じく、親から子へ代々伝えきたった料理法があった。ザロメがいつも通人らのために腕をふるった。しかるにこんどは、彼女はただ一つの献立表の中に、自分の得意な料理をすべてぶち込んでしまおうと工夫した。それは、少しも悪化していない真正なあの忘るべからざるライン料理法を、すっかり並べたてたようなものだった。あらゆる草の香《かお》り、濃いソース、実質に富んだポタージュ、模範的なスープ肉、すばらしい鯉《こい》、漬《つ》け菜、鵞鳥《がちょう》、手製の菓子、茴香《ういきょう》とキメンとのはいってるパン、などがあった。クリストフは非常に喜んで、口いっぱい頬張《ほおば》りながら、餓鬼のように食べた。鵞鳥一匹をも食いつくすほどの父や祖父から、たいへんな能力を受け継いでいた。それにまた彼は、パンとチーズとで一週間も暮らすことができるとともに、機会がくれは腹の裂けるほど食べることもできるのであった。シュルツは懇切なまた儀式ばった様子をして、彼をやさしい眼つきで見守り、ライン産の葡萄酒《ぶどうしゅ》を盛んについでやった。クンツは赤い顔色になりながら、彼をいい食い友だちだと思っていた。ザロメの広い顔は、満足げに笑《え》みを浮かべていた。――最初彼女は、クリストフがやって来たのを見た時、当てが違ったような気がした。シュルツが前もってあまり吹聴《ふいちょう》していたものだから、彼女は彼のことを、閣下ともいうべき顔つきをしりっぱな肩書をになった人だろうと、想像していた。そして彼を見ると、驚きの声を発せずにはいられなかった。
「こんな人か。」
しかし食卓で、クリストフは彼女の贔屓《ひいき》心を得ることができた。彼女はかつて、自分の腕前をそんなに称美してくれる人に会ったことがなかった。彼女は料理場へもどってもゆかないで
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