いった。彼は息を失っていた。神の中へのその墜落に酔っていた。……深淵にして神! 深潭《しんたん》にして神! 存在の火炉! 生命の※[#「風にょう+炎」、第4水準2−92−35]風《ひょうふう》! 生の激越のための――目的も制軛《せいやく》も理由もなき――生の狂乱!
危機が消え去った時、彼はもう長らく知らなかったほどの深い眠りに陥った。翌日、眼が覚《さ》めると眩暈《めまい》がしていた。飲酒のあとのように疲憊《ひはい》していた。しかし心の底には、前夜彼を圧倒した陰惨強力な光明の反映が残っていた。彼はその光明をふたたび輝かせようとした。駄目《だめ》であった。彼が追求すればするほど、光明は彼からますます逃げていった。それ以来彼は全精力をたえず張りつめて、あの一瞬の幻影を蘇《よみがえ》らせようと努力した。無益な試みであった。大歓喜は意志の命令には少しも応じなかった。
けれども、その神秘な眩迷《げんめい》の発作はそれきりではなかった。また幾度も起こった。ただ最初ほどの強烈さはもうもたなかった。そしていつも、クリストフが最も予期しない瞬間に、しかもきわめて短い急激な瞬間――眼をあげあるいは腕を
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