いて隙《ひま》がないのだと説明した。彼女はつつましく詫《わ》びを述べた。彼女は自分の無邪気なやり口の不成功をみずからごまかすことができなかった。それは目的とはまったく背馳《はいち》していて、かえってクリストフを遠ざけていた。クリストフはもはやその不機嫌《ふきげん》さを隠そうとしなかった。彼女が口をきいてる時に耳を貸そうともせず、我慢しきれない様子を隠しもしなかった。彼女は自分の饒舌《じょうぜつ》が彼を苛立《いらだ》たせてるのを感じた。そしてつとめて晩は少しの間黙ってることができた。しかし彼女の力には及ばなかった。またもやにわかにさえずりだした。クリストフはその話の中途で、彼女を置きざりにして出て行った。彼女はそれを彼に恨まなかった。自分自身を恨めしく思った。自分は馬鹿で面白くない滑稽《こっけい》な者だと判断した。あらゆる欠点が非常に大きく思われて、それを押し伏せたかった。しかし最初の試みに失敗してから勇気がくじけ、どうしても成功すまいと考え、それだけの力がないと考えた。それでもふたたびつとめてみた。
 しかし彼女は、自分でどうにもできない欠点をもっていた。容貌《ようぼう》の醜さにたいし
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