たが、他人の容貌《ようぼう》については非常にやかましかった。彼は青年の落ちつき払った残忍さをもっていて、女がもし醜い時には――少なくとも、人に愛情を起こさせるべき年齢を過ぎていず、真面目《まじめ》な穏かなほとんど宗教的な感情をもつまでに達していない時には、そういう醜い女は、彼にとっては存在しないも同じだった。そのうえローザは、怜悧《れいり》でないでもなかったが、これといって特別の才能をそなえてはいなかった。そしてまた、クリストフを逃げ回らせるほどの饒舌《じょうぜつ》な習慣で毒されていた。それでクリストフは、彼女のうちになんにも知るに足るべきものはないと判断して、あえて知ろうともしなかった。たかだか彼女の方へちょっと眼を向けるくらいのことだった。
けれども彼女は、多くの若い娘たちよりもましであった。クリストフがあれほど愛したミンナよりも確かにまさっていた。媚態《びたい》もなく虚栄心もない善良な少女で、クリストフがやって来たころまでは、自分が醜いということに気づきもせず、それを気にしてもいなかった。なぜなら、周囲の人たちも彼女の不器量を気にしていなかったから。祖父や母が、しかる時にそれを
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