けが唯一の問題であるならばまだ分る。とはいえ、ある大きさのある形のある色のそしてある種類の、何か一つの[#「何か一つの」に傍点]神を信じなければいけない。このことについても、クリストフは考えてはいなかった。彼の思想の中では、キリストもほとんどなんらの地位をも占めていなかった。それは、彼がキリストを少しも愛していないからではなかった。キリストのことを考えたらそれを愛したに違いなかった。しかし彼はキリストのことを考えたことがなかった。時にはそれをみずからとがめ、心苦しく思った。どうしてキリストにもっと興味を見出せないのか、自分でも分らなかった。それでも彼は教義を実行していた。家の者は皆教義を実行していた。祖父はよく聖書《バイブル》を読んでいた。クリストフ自身も几帳面《きちょうめん》にミサに出かけていた。彼はオルガン手だったからいくらかミサに手伝ってもいた。そして模範的な良心をもってその役目に勉励していた。しかし彼は教会堂から出ると、その間何を考えていたかはっきり言い得なかったであろう。彼は自分の思想を定めるために経典を読み始めた。そしてその中に面白みを見出し、愉快をさえも見出した。しかしそ
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