制限もなくすっかり愛しきろうとしたので、かえって最もよく相手の欠点を感ずるのであった。それは一種の無意識的な公明さであり、やむにやまれぬ真実の欲求であって、そのために彼は、最も親愛なる人にたいして、ますます洞察《どうさつ》的になりますます気むずかしくなるのだった。かくて彼は家主一家の人々の欠点にたいして、ひそかな憤懣《ふんまん》をやがて感ずるにいたった。彼らの方では、少しも自分の欠点を隠そうとはしなかった。厭《いや》なところをすっかりさらけ出していた。そして最もよいところは彼らの内部に隠れていた。クリストフも実際そう考えて、そして自分の不正をみずからとがめながら、最初の印象を脱し去ろうと試み、彼らが大事に隠している長所を見出してやろうと試みた。
彼はユスツス・オイレル老人と話をすることにつとめた。老人も話が好きだった。彼は祖父がこの老人を愛して激賞していたことを覚えてるので、老人にたいしてひそかな同情を感じていた。好人物のジャン・ミシェルは、クリストフよりもなおいっそう、友人の上に幻を築き上げる幸福な能力をもっていたのである。クリストフもそのことに気づいていた。彼は祖父にたいするオイ
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