かに多くの宝がたくわえられていたことだろう!……一民衆の力が、未来の活気が!
クリストフが義務は特殊なものだと信じたのは、誤りではなかった。しかし恋愛もやはり特殊なものである。すべてが特殊である。何かに価するすべてのものは皆――悪でさえもやはり(悪にも価値がある)――常習ということより以上の敵を有しない。魂の致命的な敵は、毎日の消耗である。
アーダは倦怠《けんたい》し始めていた。クリストフの性質のように豊富な性質の中で、自分の愛を更新してゆくには、彼女は充分の知力をそなえていなかった。彼女の官能と浮華的な精神とは、およそ見出し得るかぎりの快楽を愛から引出してしまっていた。もはや愛を破壊する快楽しか残ってはいなかった。彼女は一種のひそかな本能をもっていた。それは多くの女に、善良な女にも、また多くの男に、怜悧《れいり》な男にも、共通な本能であって、この本能をそなえた男女は、仕事もせず、子供もこしらえず、活動もせず――いかなることをも、生活をもせず――しかも、あまりに多くの活力をもっているので、おのれの無用さを堪え忍ぶこともできないのである。彼らは他人も自分らと同じく無用ならんことを望
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