攻撃するのは、卑劣な仕業《しわざ》だということ。
 フォーゲル夫人は大声をたてた。かつてだれからも、そんな調子で物を言われたことがなかった。小僧っ子から――しかも自分の家で――説諭を受けるものかと彼女は言った。そして彼を侮辱的な態度で取扱った。
 喧嘩《けんか》の声を聞きつけて、他の人たちもやって来た――ただフォーゲルを除いて。フォーゲルは自分の健康の害になるようなことはいつも避けていたのである。オイレル老人は、立腹してるアマリアから介添人に立てられて、将来は意見や訪問は差控えてもらいたいとクリストフにきびしく頼んだ。自分たちは彼の助言をまたずともなすべきことを知っており、義務を果しており、常に義務を果すだろう、と言った。
 クリストフは出て行くと言い、もう二度と足を踏み入れるものかと公言した。けれども彼は、自分にとっては直接身辺の敵となってる例の「義務」について、心ゆくまで彼らに言ってやらないうちは、決して出て行かなかった。そんな「義務」を云々《うんぬん》するなら、自分はむしろ悪徳の方を好むだろう、と彼は言った。フォーゲル一家のような人たちこそ、しきりに善を不愉快なものにしながら、善
前へ 次へ
全295ページ中233ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング