したフォーク、客の数、ひっくり返ってる塩入れなどがあって、災難を避けるために沢山の禁呪《まじない》をしなければならなかった。散歩をしてると、鳥の数を数え、それがどちらへ飛ぶかをかならず観察した。また心配そうに足下の道をうかがい、もし午前中に蜘蛛《くも》が通るのを見つけると、非常に悲しがって、引返したがった。それをむりにつづけて散歩させるには、もう正午過ぎなので前兆は凶から吉へ変ったのだと説き伏せるより外に、なんらの手段もなかった。また夢を気にしていた。彼女はいつも長々とクリストフに夢の話をした。そのちょっとした些事《さじ》を忘れても、幾時間もかかって思い出そうとした。ただ一つの事柄も彼に聞かせないではおかなかった。それはまったく荒唐|無稽《むけい》な事柄の連続であって、おかしな結婚、死人、裁縫女、王侯、滑稽《こっけい》なまた時には猥褻《わいせつ》な事柄、などが問題になっていた。彼はそれに耳を傾けなければならないし、意見を吐かなければならなかった。彼女はそれらの愚にもつかない幻影に、終日つきまとわれてることもしばしばだった。世の中は悪くできてるものだと考え、事物や人々をぶしつけにながめ、
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