やたらに嘆息してクリストフを困らした。そして彼は、自家の陰鬱《いんうつ》な小市民たちのもとをいくら逃げ出しても、やはりここにもまた、永遠の敵たる「陰気な非ギリシャ的な憂鬱病者[#「陰気な非ギリシャ的な憂鬱病者」に傍点]」を見出したのである。
 そういう不機嫌《ふきげん》な愚痴の最中に、突然、また快活な様子が騒々しく大|袈裟《げさ》に現われてくるのであった。するともう、先刻の苦情と同じく、その快活さにも手のつけようがなかった。理由もないのにいつまでもつづくかと思われるほど大笑いをし、畑の中を駆けずり回り、狂気じみた仕業《しわざ》をし、子供のように戯れ、ばかなことをして喜び、土くれや汚《きたな》い物をかきまわし、畜類や蜘蛛《くも》や蟻《あり》や蚯蚓《みみず》などをいじくり、それをいじめ、害を加え、小鳥を猫《ねこ》に、蚯蚓を鶏に、蜘蛛を蟻に、たがいに食わせ、しかも悪心あってなすのではなく、あるいはまったく無意識的な加害の本能から、好奇心から、無為退屈な心からであった。または、倦《う》むことなき欲求をもって、くだらないことを言い、なんの意味もない言葉を何十度となく繰り返し、人をいやがらせ、苛立
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