に話をつづけた。
――彼女は晩餐《ばんさん》会に列していた。大公爵もいた。ミルハは尨犬《むくいぬ》だった[#「だった」に傍点]……いや、縮れ毛の羊だった。そして給仕をしていた。……アーダはどうしたのか、地面から上へ上っていって、空中で歩いたり踊ったり寝たりすることができた。それは訳もないことだった。ただ、こう……こうすればよかった。するともうそれができるのだった。
クリストフは彼女をひやかした。彼女は笑われたのを少しむっとしながらも、自分でも笑っていた。彼女は肩をそびやかした。
「ああ、あんたにはちっともわからないのね!……」
二人はその寝台の上で、同じ皿《さら》と同じ匙《さじ》とで朝食をした。
彼女はついに起上った。掛物をはねのけ、美しい大きなまっ白い足先と、でっぷりした美しい脛《すね》を出して、敷物の上にすべりおりた。それから、そこにすわって息をつき、自分の足をながめた。しまいに手を打って、出てゆくように彼に言った。彼がぐずぐずしてると、彼女は彼の肩をとらえ、扉《とびら》の外に押し出し、鍵《かぎ》でしめ切った。
彼女はいろいろ手間どり、美しい手足を一つずつながめては差伸ば
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