を利用したのであって、ライン河の美景が見られるプロヘット飲食店で晩餐《ばんさん》をし、それから船で帰るつもりにしていた。
二人が飲食店に着いた時、一同はもうそこにすわり込んでいた。アーダは一同を責めたてないではおかなかった。卑劣にも置きざりにしたことを彼らに不平言い、そしてこの人に助けてもらったのだと言ってクリストフを紹介した。彼らはアーダの苦情はいっこう構いつけなかった。しかし彼らはクリストフのことを知っていた。銀行員は評判を耳にしていたし、事務員は二、三の楽曲を聞いたことがあった――(彼はすぐに得意然とその一節《ひとふし》を口ずさんだ。)そして彼にたいする彼らの尊敬の様子は、アーダに感銘を与えた。そのうえ、も一人の若い女ミルハ――(実際はヨハンナという名前だったが)――栗《くり》色髪の女で、始終眼をまたたき、額が骨たち、前髪を引きつめ、その支那の女みたいな顔は、多少渋めがちではあったが、しかし利口そうでちょっとかわいく、山羊《やぎ》みたいな面影があり、脂気《あぶらけ》の多い金色の皮膚をしていた――それが急に宮廷音楽員[#「宮廷音楽員」に傍点]をちやほやしだしたので、アーダはなお感
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