れたのを怒った。彼らを厄介払いしようとしてはいたが、しかし彼らにそうやすやすと思い切られたことが許せなかった。クリストフは馬鹿《ばか》げた顔つきをしていた。見知らぬ娘といっしょにやった隠れん坊の遊びが、たいして面白くもなかった。そして二人きりなのに乗じようとも考えてはいなかった。彼女も別にそうしようとは考えていなかった。腹だちまぎれにクリストフのことなんか忘れていた。
「まあ、ずいぶんひどい。」と彼女は手を打ちながら言った。「こんなに置いてきぼりにするなんて!」
「でも、」とクリストフは言った、「自分で望んだことでしょう。」
「いいえちっとも!」
「自分で逃げたでしょう。」
「私が逃げたって、それは私一人のことで、あの人たちの知ったことじゃないわ。あの人たちは私を捜してくれなけりゃならないはずだわ。もしも私が道にでも迷ったんだったら……。」
もしも……もしも事情が反対だったら、どんなことになっていたろうかと、彼女ははや心細がっていた。
「そう、少し責めてやらなくっちゃ!」と彼女は言った。
彼女は大跨《おおまた》に引返した。
道の上に出ると、彼女はクリストフのことを思いだして、また
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