。
「許しておくれ……許しておくれ……。」と彼は言った。
ローザには、初めはわからなかった、それから、よくわかりすぎた。彼女は真赤《まっか》になり、泣きだした。彼の言う意味はこうであることがわかった。
「僕が悪くとも許しておくれ……あなたを愛さなくとも許しておくれ……僕にできなくとも許しておくれ……あなたを愛することができなくとも、いつまでもあなたを愛することがなかろうとも!……」
彼女は手を引込めなかった。彼が接吻《せっぷん》してるのは自分ではないことを、彼女は知っていた。そして彼は、ローザの手に頬《ほお》を押しあてたまま、彼女に意中を読み取られてることを知りながら、熱い涙を流した。彼女を愛することができないのに、彼女を苦しめるのに、苦《にが》い悲しみを感じていた。
二人は室内の薄ら明りの中に、二人とも泣きながら、そのままじっとしていた。
ついに彼女は手を放した。彼はなおつぶやいていた。
「許しておくれ!……」
彼女はやさしく彼の頭に手をのせた。彼は立上った。二人は黙って接吻し合った。たがいに唇の上に涙の辛い味を感じた。
「長く友だちになりましょう。」と彼は低く言った。
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