《おうと》を催した。
ローザは駭然《がいぜん》として、彼の傍《かたわ》らに駆け寄った。彼の頭をかかえて泣いた。
口がきけるようになると彼は言った。
「ほんとうなもんか!」
彼はほんとうだと知っていた。しかしそれを否定したかった。あったことをないものにしたかった。けれど涙の流れてるローザの顔を見た時、もう疑えなかった。彼はすすり泣いた。
ローザは顔をあげた。
「クリストフさん!」と彼女は言った。
彼はテーブルの上に身を伸ばして、顔を隠していた、彼女はその上に身をかがめた。
「クリストフさん!……お母さんが来ますよ……。」
クリストフは立上った。
「いやだ、」と彼は言った、「見られたくない。」
彼女は彼の手を取り、涙で見えなくなってよろめいてる彼を、中庭に面してる小さな薪《まき》部屋まで連れていった。彼女は戸をしめた。真暗《まっくら》になった。彼は手当り次第に、薪割台の上に腰をおろした。彼女は薪束の上に腰かけた。外部の物音はかすかにしか聞こえなかった。そこで彼は人に聞かれる恐れなしに泣くことができた。彼は我を投げ出して激しくむせび泣いた。ローザは彼が泣くのをかつて見たことがな
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