とであった、少なくとも当分のうちは。ところが彼女はそうしなかった。そして最悪の策は彼にザビーネのことを話すことだったが、彼女はまさしくそれをした。
 彼女は胸を踊らせながら、彼の意中を知ろうとして、ザビーネはきれいだとこわごわ言ってみた。非常にきれいだとクリストフは冷やかに答え返した。ローザはみずから求めたその答えを予期していたものの、それを耳にきくと心に打撃を受けた。ザビーネがきれいであることを彼女はよく知っていた。しかしかつてそれを気に止めなかった。ところが今初めて、クリストフの眼を通して彼女をながめていた。そして見て取ったのは、彼女のすっきりした顔だち、小さな鼻、かわいい口、ほっそりした身体、優美な動作……。ああどんなにか切ないことだった!……そういう身体になれるならば、何物に換えても惜しいとは思わなかった。自分の身体よりあの身体の方を人が好む訳は、あまりによくわかった。……自分の身体は!……こんな身体に生まれるとはなんの因果だったろう。なんという重々しい身体だろう。なんと醜く見えることだろう。なんと厭らしいことだろう。そして、それから解放されるには死より外に道はないと考えると!
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