けないことだとは気づかなかった。そしていつもの頓馬《とんま》さで、その後毎日同じことをやった。
翌日クリストフは、ローザを傍《かたわ》らに控えながら、ザビーネが出て来るのをむなしく待った。
その次の日には、ローザ一人きりだった。二人は彼女と争うのをやめていた。しかし彼女がかち得たものは、クリストフの恨みだけだった。クリストフは唯一の幸福たる大事な晩の楽しみを奪われたのを、非常に憤った。自分の感情にばかりふけって、かつてローザの感情を察してやろうともしなかっただけに、彼女をいっそう許しがたく思った。
かなり以前からザビーネは、ローザの意中を知っていた、自分の方で愛してるかどうかを知る前に、すでに彼女はローザが嫉妬《しっと》を感じてるのを知っていた。しかし彼女はそれについてなんとも言わなかった。そして勝利を確信してる美しい女にありがちの残忍さをもって、彼女は黙って嘲弄《ちょうろう》半分に、拙劣な敵の徒労をながめていた。
ローザは戦場を自分の手に収めながらも、自分の戦術の結果を憐れにもうちながめた。彼女にとって最善の策は、強情を張り通さないことであり、クリストフを平穏にさしておくこ
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