消えてしまった。
クリストフは意地悪く言いつづけた。
「そしてあなたがそれを三十もこしらえたら、すっかりお婆《ばあ》さんにでもなったら、生涯《しょうがい》を無駄《むだ》にはしなかったと自分で考えることぐらいはできるでしょう。」
ローザは泣きたくなっていた。
「まあ意地悪だこと!」と彼女は言った。
クリストフは恥ずかしくなった。そして二、三言親切な言葉をかけてやった。彼女はごくわずかなことにも満足しがちだったので、すぐにまた信頼してしまった。そして盛んに騒々しいおしゃべりをやりだした。家の中での習慣のために、低い声で話すことができずに、大声にわめきたてた。クリストフはいくら我慢をしても、不機嫌《ふきげん》さを隠すことができなかった。初めは苛立った簡単な言葉を返してやったが、次にはもうなんとも返辞をせず、背中を向けて、彼女のがらがらしたおしゃべりのままに歯ぎしりをしながら椅子《いす》の上にやきもきした。ローザは彼がじりじりしてるのを見、黙らなければいけないことを知っていた。それでもなお激しくしゃべりつづけるばかりだった。ザビーネは数歩先の暗がりの中で黙って、皮肉な平静さでその光景を見
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