に感じていた。そして施毛曲《つむじまが》りの気質から、彼女がフォーゲル夫人の気に入っていないことがことにありがたかった。

 ごく暑い時には、夕食後、午後じゅう日の当っていた息苦しい中庭に残ってることはできなかった。家じゅうで少し息のつける場所といっては、ただ往来のそばだけだった。オイレルとその婿とは、ルイザといっしょに、時々入口へ行ってその段に腰をおろした。フォーゲル夫人とローザとは、ちょっと姿を見せるきりだった。家庭の仕事に引止められていた。フォーゲル夫人は、ぶらぶらする隙《ひま》がないことを示すのを誇りとしていた。手いっぱいに仕事をしないで家の入口で欠伸《あくび》ばかりしてるようなそんな人たちを見ると、気が苛《い》ら苛らしてくるなどというようなことを、聞えよがしに高い声で言っていた。彼らを働かせることができない――(彼女はそれを口惜《くや》しがっていた)――ので、その姿を見まいと決心して、家にはいって癇癪《かんしゃく》まぎれに働いた。ローザは彼女を真似《まね》なければならないと思っていた。オイレルとフォーゲルとは、どこにいても風が強すぎるような気がし、身体が冷えるのを恐れて、室へ
前へ 次へ
全295ページ中102ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング