とでもいうような調子だった。神聖な一日じゅう、何にもせず、勝手なことに多くの時間をつぶし、人が懲役人のように身を粉にして苦労してるのに、横柄にも落着き払ってそれを馬鹿にするとは――おまけに、世間の者までが彼女を至当だとするとは――それはあんまりのことだった。正直に暮そうとする勇気をくじくものだった!……が幸いにも、神はよくしたものだ! この世にまだ分別をそなえた者が数人あった。フォーゲル夫人はそれらの人々といっしょにみずから慰めていた。若い寡婦について、鎧戸《よろいど》の間からのぞき得た一日のことを皆で言い合った。それらの悪口は、晩に食卓へ皆集った時、一家の者の喜びとなった。クリストフは心を他処《よそ》にして聞いていた。フォーゲル一家の者たちが隣人の行いを非難するのを、彼はあまりに聞き慣れていたので、もうそれになんらの注意も払わなかった。そのうえ彼はまだザビーネ夫人については、その露《あら》わな頸《くび》筋と両腕とをしか知らなかった。それらのものはかなり気に入るものではあったが、それだけでは、彼女の一身に決定的な断案を下すわけにはゆかなかった。けれども彼は、彼女にたいして十分の寛容を心
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