ろしく上下した。高熱の状態と貧血の状態とが、急激に移り変わった。身体が焼けるようになり、寒さに震え、悶《もだ》え苦しみ、喉《のど》がひきつり、首に塊《かたま》りができて呼吸を妨げた。――もとより彼の想像はおびえた。彼は自分の感ずることをことごとく家の者に語りえなかった。しかし一人でたえずそれを分析し、それに注意して、苦悩をますます大きくなし、また新しく作りだしていた。自分の知ってるあらゆる病気を、次から次へとわが身にあてはめた。盲目になりかけてるのだとも思った。歩きながら時々|眩暈《めまい》に襲われたので、突然倒れて死ぬのではないかと恐れた。――中途にしてやむ、若くして夭折《ようせつ》する、そういう恐ろしい心配が、いつも彼を悩まし、彼を圧迫し、彼につきまとっていた。ああ、どうせ死ななければならないものであるとしても、少なくとも、今はいやだ、勝利者とならないうちはいやだ!……
勝利……。みずからそれと知らずに、彼がたえず燃やしたてられてる、その固定観念! あらゆる嫌悪、あらゆる労苦、生活の腐爛せる沼沢《しょうたく》の中において、彼を支持している、その固定観念! 将来いかなるものになるか
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