けませんよ、お気の毒ですが、(彼女は親切らしく言ったが、ついに彼にもわかりかけたほどほんとうは人を馬鹿にしたものだった)そんなことができるものですか。子供の冗談でしょうよ。」
「なぜです? なぜですか?」と彼は尋ねた。
 彼は彼女が真面目に言ってるのではないと思い、前よりやさしくなったその声にほとんど安心して、彼女の手をとった。彼女はなお微笑みつづけて言った。
「でもねえ。」
 彼はせがんだ。彼女は皮肉な控目で――(彼女はまったく彼の言うことを真面目にはとっていなかった)――彼に財産がないことや、ミンナの趣味が違ってることなどを言った。彼は言い逆らって、それはなんでもないことで、自分は金持ちにも有名にもなろうし、名誉や金や、ミンナの欲するものはなんでも手に入れようと言い張った。ケリッヒ夫人は疑わしい様子を見せた。彼女はその自負《うぬぼれ》を面白がっていた。そしてただ首を振って打消した。彼はなおも強情を張り通した。
「いいえ、クリストフさん、」と彼女はきっぱりした調子で言った、「いいえ、議論の余地はありません。そんなことができるものですか。ただ財産のことばかりではありません。いろんなこと
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