てくれなかった。彼はぐずぐず挨拶《あいさつ》を長引かし、明日また来るように言われるのを待った。がそれも問題にはならなかった。彼は帰って行かなければならなかった。ミンナは送っても来なかった。彼女は手を差出した――無関心な手を。それは彼の手の中に冷やかに託された。そして彼は客間の中で彼女と別れた。
彼は心おびえながら家にもどった。二か月以前のミンナは、彼のなつかしいミンナは、もう何一つ残っていなかった。何事が起こったのか? 彼女はどうなったのか? このあわれな少年は、生きた魂の、それも大部分は個々の魂ではなくて、たえず相次ぎ消え失せる一団の魂であるが、そういう生きた魂の不断の変化を、全部の消滅を、根本的の更新を、まだかつて経験したことがなかったので、彼にとっては、単純な事実もあまりに残酷であって、それを信じようと心をきめることができなかった。彼は恐れてその考えをしりぞけ、自分の方で見当違いをしたのであって、ミンナはやはり同じミンナであると、むりにも思い込もうとした。翌朝また彼女のところへ行って、ぜひとも話そうと、彼は決心した。
彼は眠らなかった。夜じゅう、柱時計の打つ音を一々数えた。ご
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