から眼を離さず、恵みの一|瞥《べつ》を懇願していた。しかし彼女が彼を見る時――それもまれにであって、彼よりもむしろ母の方に話しかけていたが――彼女の眼はその声と同じく、愛嬌《あいきょう》はあるが心がこもっていなかった。彼女は母がいるので用心したのであろうか? 彼は彼女と二人きりで話がしたかった。しかしケリッヒ夫人は片時も彼らから離れなかった。彼は自分のことに話を向けようと試みた。自分の仕事や抱負のことを話した。ミンナが自分から逃げようとしてることを彼は感じた。そして彼女の心を引きつけようと努めた。実際彼女は、非常に注意して彼の言葉に耳傾けてるらしかった。彼の話に種々の感嘆詞を插《はさ》んだ。それはいつもうまくあてはまるとは言えなかったが、しかしその調子には心|惹《ひ》かれてるさまが現われていた。けれども、彼がそのあでやかな微笑《ほほえ》みに心酔って、また希望をいだき始めた時、ミンナが小さな手を口にあてて欠伸《あくび》をするのが眼にとまった。彼はぴたりと話をやめた。彼女は気がついて、疲れを口実に愛想よく言い訳をした。彼はまだ引止められることと思いながら立上がった。しかしだれもなんとも言っ
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